YOUNG GIRL ALWAYS THINK ABOUT SOMETHING

世界で一番ダサいブログタイトル。ライブの話や自分の話を長めに書きたくなると突然更新するやつ。

獣道 メモ

内田英治監督『獣道』のFilm Screeningに行ってきました。上映後のトークがいろいろ面白かったのでノートにメモしたんですけど、多分こういうところに記録しないと私は見返さないなと思ったので、自分のために記す意味も込めて共有します。

その前に前提の余談。
現在イギリスの多くの大学は、教員がストライキをしていて授業がなかなか開かれないという大変な状況にあります。年金の額が低いぞ!とかなんとかで。せっかく授業を受けに来たのに!大学の施設にもなかなか入れないので、困りつつ暇を謳歌しています。長文を更新してしまうぐらいには暇。(やるべきことはあるけど大抵やりたくないことである。)

ストライキの話は別にいいのです。
なんと、ストライキによってキャンセルになった日本映画の授業の代わりとして、みんな出席してね!と言われたのが今回の『獣道』のスクリーニング。そんなテキトーな!と思いましたけど、非常にラッキーな機会でございますね。

この『獣道』、日本の地方が舞台になってる超絶ドメスティックなテーマの映画だったんですけど(ネグレクト、宗教、不良・ヤクザ、性産業などなどなど)、プロデューサーは外国人だし、日英独共同制作らしい。すごい。
今回は監督とプロデューサーのお二人がいらしていて、映画上映後にQ&Aタイムが設けられていました。私が取っている授業の先生がこのイベントのチェアマンだったらしく、インタビュアー的な役割をしていました。この外国人のプロデューサーの方から見た日本の映画・映画市場についての認識が特に興味深かったですね。

以下おもしろかったトークを抜粋してメモ

・映画には本物の暴走族とそのオートバイが出ている。警察がナンバープレートを撮りに来たりした。この街に本当に暴走族がいるようなシーンは撮るなって注意されたりした(監督)
・日本では映画は人気だけれど、その人気は出演するスターの人気に支えられたもので、映画自体のクオリティーはそこまで重視されない(プロデューサー)
・海外市場では日本と違って監督の名前がとても大事だ(プロデューサー)
・日本ではLong Cut(Version?)が好まれるけど、海外ではShort、Pop、Easier、High Paceの方が好まれがち(プロデューサー)(長回しとかカットのことを言っていたのか、ストーリーについてのlong/shortの話なのか、ちょっとうまく聞き取れませんでした。無念。)
・現代におけるDistribution(流通) Company of Japanese Filmの役割って?→日本ではそこまで人気がないけれど、いい映画、海外で人気が出るような日本の映画はたくさんある。日本のメンストリームの映画はreally really badだ、少女漫画やTVドラマのスピンオフのような酷い映画しかない。わたしの会社は日本ではメインストームじゃないけれども良い映画を見つけ、そういった映画を撮っているけれどなかなか儲かっていない良い監督を救うことを目的としている(プロデューサー)
・どのぐらい海外のオーディエンスを意識して映画を製作したか?→外国では誰も見てくれないだろうね、と言いながら作った。日本の田舎の不良はとても特殊である:なぜなら海外の不良と違って、18歳になる/大人になると悪いことをやめるからだ。その中でも1割ほどはやめずにヤクザになるよ。この映画はtoo domesticだから海外ではウケないだろうと思っていた(監督)
・日本の旗は右翼のイメージがあり普通使わないものだが、不良たちは旗が大好き。旗を映画内で使用するかどうか悩んだが、リアリティを追究するため使用した(監督)
・海外では日本のヤクザCoolみたいなイメージがあるかもしれないが、本当はこのように女性や子供を搾取して儲けるような人々だよ(監督)

以上。

日本のメインストリーム映画は超最悪!少女漫画映画ばっかり!みたいなくだりで笑ってしまった、なんていうか、ロンドンで外国人がそんな状況の話をするとは!という意外性もあったし、あと、さすがに悪く言いすぎじゃないかしら、普通に園子温とか人気あるし、色々と誇張して断言しすぎだ。まあそんなものなのかな。
何がメインストリーム、何がアンダーグラウンドか、ってなかなか難しい話ですね。
でも、海外での方が評価されるから海外でもっと儲かるようにする、それを制作費にして次の作品を日本で撮る、みたいなサイクルは面白いなと思った。海外で評価されている!という噂によって日本でも有名になったりするしな。日本のクリエイティブ産業のマネジメントをテーマにした授業や講演を色々聞いていると、結構こういうモデルがでてきがちである。本当のところ機能してるのか?結局海外の中でもワンオブザアングラカルチャーだし、なんなら輸出などに伴うコストの方がかかっていたりしないのだろうか?といった疑問はあるのですが。

でも、日本にいた時よりも自分の視野はちょびっと広くなった、ぐんぐぐーんだし、そんなアプローチもあるのか!そんな状況の打開策もあるのか!という発見驚き感動はおもしろいですね。

ところで、地方都市映画といえばなんてったってサイタマノラッパー。もうバイブル。私の世界が開いた原点。うお~~~。
『獣道』は、SR3ぐらい話自体えぐかった、いや、えぐかったはずなのに、でもSR3を見た時の震える怯える感じとは全然違って、ハードなのにコメディタッチでさらっとポップに観られる映画でした。面白いな。地方をテーマにした映画についてSplash!!という雑誌か何かが特集をしていた記事を読んだ覚えがあるが、もう中身を忘れてしまった。読み返したいのだが、実家にあるためすぐには読み返せません残念。

そんな感じ。